岐阜における信長とカブラル(『カブラル書簡』より)(4)
最後に、『カブラル書簡』に記された信長との謁見場面を改めて総括し、三名(カブラル、フロイス、ロレンソ了斎)が伝えたキリスト教の教えの要点を整理して締めくくりたい。
3.キリスト教教義についての問答
質素な衣装と来世観に関する説明(仏僧との対比)
この教えが伝えられたのは、信長がカブラル一行の質素な衣装(絹を着用していない貧しい身なり)に注目し、なぜそのような衣装を着ているのかを尋ねたことに端を発する。
ロレンソの説明の核心:ロレンソは、この衣装がイエズス会がインドで用いる装束であり、日本でもこれ以上の絹布を着用しないという会の決まりを伝えた。その上で、彼は、仏僧とキリスト教修道士の来世に対する考え方の違いを信長に説明した。キリスト教が現世の世俗的な富ではなく、来世の報いに焦点を当てているという価値観を伝えるものであった。 ロレンソ:「仏教の僧侶たちは、来世について知らず、天国の至福についても期待していないため、今生において良い扱いを受けることに執心しています。それゆえ、彼らは格別の方法で衣装をまとい、食するのです。しかしながら、我が会の修道士たちは、真実を知り、今生の後には地獄と天国があることを知っておりますので、後に天に召されんがため、慎ましくかつ貧しく生きるように努めております。」
信長の反応:信長は、「(イエズス会の)宗旨に即した方法で着想するのは、彼には大変良いことに思われる」と答えた。そして、ロレンソの説明には大変満足し、大いに拍手をした。「これらの者たちこそ、自分が探し求める明敏で正直な人々であり、日本の邪悪な僧侶たちとは異なることよ」と称賛し、同行の大身たちにもその言葉を伝えた

